『NHK短歌』に短歌が掲載されました(2017年6月号)
ちなみに『NHK俳句』は全滅でした。
調子が悪いわけではありません。この記事を書いている今現在は調子が悪いかもしれませんけれども。なんでかわかんないけど、ひとつもとられませんでした。新しい選者になって初回で無得点というのは、幸先が悪いのか、あるいはこのまま一生ダメなのかもしれません。
短歌では2首、とっていただきました。
黒瀬珂瀾選
- 階段を降りるときだけポケットの手を出す君の右手に触れる 斎藤秀雄
佐伯裕子選
- 君はきょうノースリーブで横にいて眩しい月のごとき両肩 斎藤秀雄
なぜか、(1)口語・新仮名で書いた、(2)恋愛っぽい内容、という共通点がありました。
「恋愛っぽい内容」については、たんに「君」という登場人物がいるだけなので、恋愛の歌と解釈する必要もないわけですけれど、そう読まない必要もないかと思います。男女の恋愛には限らないですが。
いきなり恋愛をテーマにしたりして頭がおかしくなったんじゃないか、いやもともとか、と心配されるかもしれませんが、まだ短歌にかんしてはフォーマットの広さ(プロクルステス寝台)感覚を探っている状態なので、テンプレートに沿った無内容なものが採用された、ということかと思います。
そういうもの(無内容を志向したもの)ばかり書いているわけではないですが、今回はそういうものがとられたということであります。
俳句に関しては、形式に書かされているのだ、私が書いているのではなく有季定型というフォーマットが書いているのだ、という感覚があるのですけれど、短歌ではまだ自分を消せていない感覚があります(いや、俳句もまだまだですが)。
ただ、それを言うと、こういう記事、散文の文章だって、言語というか文法というか、〈大文字の他者〉の背後からの声によって書かされているわけですから、そこに私がある(いる)とはそもそも思わないのですが、形式をうまく活用・利用する手触りのようなものは、少なくとも短歌を書くときにはまだ、そう多くは訪れないなあ、というふうに思っています。
続きを読む追記アリ【朗読】江戸川乱歩「白昼夢」を朗読します@FMモットコム
【2017.04.30末尾に追記】
宣伝です。
福島県本宮市のローカルFMラジオ局、エフエムモットコムに朗読で出演します。
本当に、まじで、真剣に、聴いてください。お願いします。お願いしましたからね!
FMモットコムで江戸川乱歩「白昼夢」を読みます。
— Hideo Saito (@hideocpa) 2017年4月24日
4月28日8時15分と再放送5月1日18時45分。
ぜひ「江戸川乱歩を読んだ人の朗読がもう一度聴きたい!」とメールをお寄せください!>web@fm-mot.com
リスラジで聴けますhttps://t.co/Dh6JPlwb7q
今度の金曜の早朝と、来週の月曜の夕方の再放送。
- 2017年4月28日(金)8時15分~
- 2017年5月1日(月)18時45分~
そして放送を聴いたら(あるいは聴き逃したら)FMモットコムに感想メールをお送りください。「江戸川乱歩を読んだ人の朗読をもっと聴きたいです!」とお願いします。放送が終わってからね。
聴く方法その1。ListenRadio(リスラジ)。
「全国のラジオ局」>「東北」>「FM-MotCom」
スマホアプリもあります。
聴く方法その2。CSRA。
「STATION LIST」>「東北」>「エフエム モットコム」の[放送を聴く]ボタン。Windows Media PlayerやVLC Media Playerのようなmmsストリーミング放送に対応しているソフトウェアで聴くことができます。
ストリーミング用asxファイルへの直リン>http://csra.fm/asx/fmmotcom.asx
録音する方法。
VLC Media Playerがインストールされていれば、以前アップしたPowerShellスクリプトで録音できます(Windows限定)。Windows以外ならシェルスクリプトを書くとかして、なんとかできます。
GitHubからZIPでダウンロードして、motrec.bat
をダブルクリックすると、次回放送分の予約ができます。
読む作品、江戸川乱歩「白昼夢」について
光文社文庫版江戸川乱歩全集が底本です。
ちくま日本文学007のバージョンと少し違う点があります(確認したら、ほんの少しだけだった)。
ぼくはことあるごとに、ちくま日本文学『江戸川乱歩』を推薦してきたので、すこし心苦しくもあります。
そこで、20円で入手していただくべく、私家版を発行しました。
江戸川乱歩「白昼夢」の私家版を発行しました。底本は光文社版全集です(ちくま日本文学のものと少し違う)。8頁の折本です。
— Hideo Saito (@hideocpa) 2017年4月24日
A3白黒20円。
セブンイレブン→28767298
その他のコンビニ→2XJ7NMF9DA
5月1日(月)まで。https://t.co/dhaOUU96Kf
折本の作り方・読み方はnoteに書きました。
まあ、青空文庫版は光文社文庫版全集を底本にしているので、Kindleで入手してもいいのですが。
予習しておいていただきたいこと
「白昼夢」はとても短いので、いちおう、読んでおいてください。
それ以外には、「押絵と旅する男」を読んでおいてください。
「白昼夢」を読むのに必要な前提となる知識は:
- 江戸川乱歩の本名は平井太郎である。
- 「白昼夢」の初出は大正14(1925)年で、いわゆる「本格物」から離れるきっかけとなる作品であった。「人間椅子」や「押絵と旅する男」の原点。
- 「ここはお国を何百里」:太宰治の『人間失格』にも登場するこの歌、明治38年発表の「戦友」という軍歌。YouTubeにいくつかのバージョンがアップされているので聞くべし。郷愁を誘うという理由で太平洋戦争中は禁歌とされていた。
- 20世紀初頭に全国展開した「有田ドラッグ商会」:有田音松が経営したチェーン展開したドラッグストア。各支店では蝋細工の性病患者の患部模型(人体模型)を猟奇的に展示し、話題となった。「有田ドラッグ」について、アンサイクロペディアには項目があるが、Wikipediaにはない。
江戸川乱歩における夢の表現について
という記事を書こうと思っているが、いつになるかは分からない。
2017.04.30追記
本放送(4月28日)を聴いた方は気付いたかと思うけれど、音声がおかしなことになっている。朗読が始まると同時に、いきなりAMラジオのようなデグレードした音声になった。
まず、作品冒頭、「白昼夢(タイトル)あれは白昼の悪夢であったか、それとも現実の出来事であったか。晩春の生暖い風が、オドロオドロと、火照った頬に感ぜられる、蒸し暑い日の午後であった。」という20秒弱の、マスター音源の周波数特性をグラフ化したものを見ていただきたい。
220Hzをピークに、86Hzに向かって減衰している。普段のぼくの朗読と比較すると、若干高めの特性を示しているが、高い音程から開始しているので、冒頭部分がこうなっていることは理解できる。
次に、放送された音声の、同じ部分の周波数特性を見ていただきたい。
500Hzをピークに、86Hzに向かって減衰している。
音程で言うなら、1オクターブ以上うえにピークが来ている。つまり、500Hz付近にピークを持つハイパスフィルター(イコライザー)で基音が抹消されている
いろんな嫌がらせを考えつくものだなあと感心してしまうが、基音をカットしたなら、上方倍音列(自然倍音列)=基音の周波数に整数2をかけた周波数以上の音しか聴こえない。これはぼくの声ではない、としか言いようがない。
「ラジオだから」という言い訳は通用しない。なぜなら、朗読が始まる直前の、番組イントロ部分の音声は、320Hzと550Hzのふたつのピークをもつ周波数特性だからだ。
ラジオだから低音部分はカットしたというなら、番組イントロ部分もそうなっていなければならないだろう。
念のために、4月14日放送の、太宰治「待つ」の冒頭部分の周波数特性も見よう。
250Hzと550Hzにピークをもつ周波数特性になっている。
ということは、少なくとも250Hzまでの低音ならカットせずに残せる、ということを意味している。
読者諸氏には、福島県という「悪い場所」で、どのようなことが生じているのか、想像していただきたく思う。エフエムモットコムまで、メールお待ちしております。
NHK俳句とNHK短歌に掲載されました(2017年5月号)
正木ゆう子選・佳作
- 卒業すなにもかもが毀れたまま 斎藤秀雄
小島健選・佳作
- ぶらんこの背中を押したのは我か 斎藤秀雄
栗木京子選・佳作
- 銀色のバトンが飛んで輪をつくり金色の鍵たくさんこぼす 斎藤秀雄
というわけで、正木ゆう子さんには初めて採っていただいた。滑り込みセーフ(?)。
5月号は、3月放送分の入選作・佳作が掲載される。ということは年度が変わり、選者が次号から変わる(放送では4月から新しい選者が出演している)。
一年を振り返ってみて、というわけでもないのだけど。
なにしろ我が家のあたりではようやく桜が咲いた頃だというのに、もう「蛍」という仲夏の季題の締切が迫っているわけで、俳人をやっていると、なにかと慌ただしく、季節をじっくりと感じている暇などない。とはいえアーリーアダプター的な先取り優越感はある。
ともあれ振り返る:
- 堀本裕樹さんと夏井いつきさんには、佳作で採っていただくことが多かった。
- 小島健さんにいきなり入選で採っていただいた。人生のピークかもしれない。(笑)。
- なんの因果か短歌もはじめた。ネットプリント毎月歌壇で谷川電話さんに採っていただいた。
- ネットプリント毎月歌壇で石井僚一さんにも採っていただいた。
- 角川『俳句』で名村早智子さんに推薦で採っていただいた。
- 角川『俳句』で嶋田麻紀さんに秀逸で採っていただいた。
- もう絶対無理、と諦めていた正木ゆう子さんに最後に採っていただいた。
- 俳句ポストは不遇であった。
今年度は、某同人誌に同人として参加予定です。
NHK俳句とNHK短歌に掲載されました(2017年4月号)
初めて『NHK短歌』のテキストに短歌が掲載されました。と思ったら、工藤吉生さんの名前が。
ぼくがこうやって俳句とか短歌とかが何かに掲載されるたびにいちいちブログで報告するというダサかっこ悪いことをしている理由は、工藤さんがやっていたからだ。
ダサかっこいいことはかっこ悪いが、ダサかっこ悪いことはかっこいい、という感じがする。なんとなくだけど。
『NHK俳句』も『NHK短歌』も4月号(4月放送分)から新しいシーズン(改編期的な意味で)がはじまる。しかし入選・佳作の掲載は、放送よりも2ヶ月遅れるので、来月号までは前シーズンの選者とのおつきあいになる。
『NHK俳句』。3月でお別れになる堀本裕樹さんの選。又吉直樹さんとやっていた「夜の秘密結社」も終わってしまったし、しばらく堀本さんのご指導をあおぐことはできなくなりそうだ。
季語「薄氷」は「うすらひ」とも「うすごほり」とも読めて、使い勝手のよい季語のひとつ。ここでは下五に置いて「うすごほり」。
岡本太郎の「歓喜」は曹洞宗久国寺(リンク先はYouTube。画像はそのキャプチャ)に置かれたオブジェだけれど、いまはたしか岡本太郎記念館の庭にあるのではなかったかな(リンク先は360度ぐりぐりして見られるやつ)。最近行っていないので定かではないですが。
『NHK短歌』。短歌の方は、4月からの選者が全員代わるのですね。栗木京子選。
- 釘箱の釘に紛れて花びらは驚くほどの鈍色になる 斎藤秀雄
鈍色=にびいろ。元ネタはもちろん、尾崎放哉の「釘箱の釘がみんな曲つて居る」。七音しか一致しなくとも「釘箱の釘」といったらもう尾崎放哉のこの句しか思い浮かばないという事態は、三音でYMOのライディーンだと分かる、という事態に近い。ような気がするのだけど、いかがか。
Twitterのモーメントに初春(概ね新暦の2月)の分の一日一句をまとめてあります。
確定申告を2時間で終わらせる2017年版
毎年、「確定申告タイムアタック」というのをやっている。去年はマイナンバーカードが確定申告締め切りまで届かなくて電子申告ができず断念したが(申告書の作成だけやって、郵送した)。一昨年はWindows版のGnuCashが起動しない不具合があったため、Macで決算処理・期首処理をした(申告はWindowsから)。
確定申告の手順は毎年忘れてしまうので、過去の自分の記事を読みながら進める。この記事も来年の自分へ向けたメッセージである。
なお、決算処理・期首処理の手順もいちおう、書いておく。
用意するもの・準備
カードリーダー、2000円ぐらいのを使ってます。
前提として:
- 僕が配布しているTKC互換個人事業主用GnuCash勘定科目を使っている
- 期中の処理(複式簿記による仕訳)には怠りがないものとする
- 青色申告
角川『俳句』掲載&うにがわえりもさんの句(2017年3月号)
今月は、一句、採っていただきました。
朝妻力選・佳作:
- 東北にゐて東北の枯野かな 斎藤秀雄
角川俳句にせよ、NHK俳句にせよ、直接は会ったことがないけれども「おっ」と思う句を書くひとの名前は覚えているもので、そういう名前をみつけると嬉しくなるし、なかなかみつからないと、「おや、具合でも悪いのかしら」と心配になるし、みつけたらみつけたであまり攻めてない無難な句を書いていると「なにやってんの?」みたいな勝手なことを思う。
●
ところで『俳句』3月号では鬼貫青春俳句大賞の発表があった。これは15歳以上30歳未満という極めて厳しい年齢制限がある賞なので、基本的にはぼくとは関係がない世界だと思っていたのだけれど、なんとあのうにがわえりもさんが大賞を受賞なさっていた。
「あの」というのは、短歌の世界で有名な、あの、うにがわえりもさんである。作句は今回が初めてとのこと。
うにがわさんの書く短歌は、ぼくの勝手な印象だけれど、端正でキリッとしていながらも(たとえれば「オーバーレイ」のようなコントラストを高めるレイヤーを低い不透明度で丁寧に何枚も重ねたような)、最終的にガウスぼかしをかけたような、優しいイメージ(Photoshop比喩)。
たとえば:
- 手に入れたいものばかりある 永遠になくなることのないぶどうなど うにがわえりも
- 海岸で日の出を待つと泣けてきた 驚くほどの孤独に気づき うにがわえりも
あたりがぼくの「フェイバリット短歌.txt」テキストファイルにメモしてある。
うにがわさんのTwitterプロフィールには
- 君がいたころの耳あか絡めとりながら野球場に一人きりで
が掲載されていて、これが代表作なのかもしれない。
うん、私の中で短歌は「筮竹」みたいなイメージ。もしくは、ハリポタに出てくる「憂いの篩」に入れる記憶のモヤモヤの保存瓶みたいな。
— えりうに (@eriuni_tanka) 2017年2月27日
そのうにがわさんが初めて書いた俳句が、「好きな女の子ができて」という題がつけられた30句で、これが今月の『俳句』に全句掲載されている(このために今月号を買っても損はない)。
続きを読む『NHK俳句』に俳句が掲載されました(2017年3月号)
放送は3月で最終講義、4月から新年度がはじまります。
新年度選者は今井聖・高柳克弘(「高」は機種依存文字のハシゴダカ)・夏井いつき・櫂未知子、の4人で、夏井先生だけ継続。
とはいえ、テキストに掲載されることを目指して精進しているわれわれ底辺俳人にとっては、テレビ放映から2ヶ月後のテキストまでが本番。もうちょっとだけ続くんじゃ(3月号テキストには、1月放送の入選句と、選外の佳作が掲載される)。
堀本裕樹選・佳作。
- 風花や救急隊を待つ少女 斎藤秀雄
小島健選・佳作(小島先生に佳作で採ってもらったのは初めてじゃないかな、たぶん。入選は一度ある)。
- スケートの影を削つてしまひけり 斎藤秀雄
なお、『角川季寄せ』べんり。