守るべきものなど何もないくせに袋へ優しく卵を詰める(橙田千尋)
※「うたの日」に書いた選評をサルベージしてみます。ブラウザにベタ書きしていたので。初出になかった改行を加えたり、誤字を訂正したりはしています。
守るべきものなど何もないくせに袋へ優しく卵を詰める
/橙田千尋
卵を買ったら、袋には優しく詰めなければならない。当たり前のことであるからこそ、どんな人でも、たとえば守るべきものがない、いわゆる「無敵の人」でも、いつもやっている当たり前の振る舞いに、拘束されてしまう。そんなおかしみ。こういう細部に、詩は宿るのだという、お手本のような歌だなーと思いました。