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角川『俳句』2017年6月号・カレンダーとか

sammā-samādhi by Hideo Saito on 500px.com

もう来月号が出てしまうので、角川『俳句』2017年6月号について、書いておく。

まず。拙句、対馬康子選・佳作で一句採られた。







紙面では、宇多喜代子の対談のゲストが中牧弘允で、話題はカレンダー(暦)なのだけど、中牧弘允といえば博識の文化人類学者で、日本の企業と宗教の関係を描いた本をいろいろ出していて、興味深い人。

最近だとはてな界隈ではダスキン宗教が話題になっていたけど、「王殺し」の儀式としての社葬とか、日本の企業って経営者の帰依する宗教によって成り立っている面が、少なくない。という部分を中牧さんは執拗に描いている。

宗教色を薄めて地方の中小企業にもゆきわたるようにシステム化したのが倫理研究所の主催する倫理法人会で、朝礼で『職場の教養』っていう小冊子を朗読させられている職場も多いのではないか。

倫理研究所の理事長・丸山敏秋は親学推進協会の評議員もやっている。つい先日、百田尚樹が代表呼びかけ人の「放送法遵守を求める視聴者の会」が「安保法制や特定秘密保護法に関するテレビの報道は反対ばかりに偏っており、放送法違反だ」というような記者会見をしたのが話題になったけれど(あとこの会の代表呼びかけ人がすぎやまこういちから百田尚樹に交代したと発表した)、この「視聴者の会」の賛同者にも名を連ねている。

日本会議の5周年へのお祝いの言葉「各界より」では

日本会議並びに日本会議国会議員懇談会設立五周年を心よりお慶び申し上げます。今日の世相を見るとき、ますます本会議の役割の重要さを痛感せずにはおられません。とりわけ、社会を構成している最小単位である家庭の崩壊は目を覆うばかりで、いっときの猶予もありません。この復旧への運動に今こそ開闢以来築いてきたすばらしい伝統文化に思いを馳せ、先人たちの尊き働きに感謝の念を抱き、よってたつところの精神的支柱を再び確立すべき危急存亡の時と申せましょう。

(各界より « 日本会議)

みたいなことを言っておりんす。

すごく余談だった。

『俳句』6月号の宇多対談では、世界中のカレンダーについて縦横無尽に語っていて、面白い。

「日本の四季の分け方には四つある」というような話があって、グレゴリオ暦太陽暦)と太陰太陽暦(いわゆる旧暦)と、二十四節気と、あとなんだろう。と思っていたら、そういうことではなくて、

というものらしい。後者2つは知らなかった。

あとまあ、世界中で「正月」を祝う風習はあるのだけど、グレゴリオ暦の1月1日をお祝いするのは世界中で日本だけだっていうのも面白かった。

そういえば新暦が導入されたのって、明治5年の年末、この年はいわゆる「閏月」があってほんらい13ヶ月ある年だったのだけど(12月のあとに閏12月が来る予定だった)、これを飛ばして新暦導入したのは公務員の月給を1ヶ月分安くするためだった、って池上彰が言ってた。昔。

宇多喜代子は《私のひいじいさんは改暦になったとき、「正月に月が出ているのはおかしい」と大騒ぎをしたそうです(笑)》と言っていて、そうよなあ、と思った。「ついたち」って「朔日」で新月ですものね。

「平成俳壇」から気になった句を列挙したいなあ、と思っていたら、ひとつき過ぎてしまった。網羅的でないけれど、ざっくり眺めたときにひっかかった句を挙げます。網羅的でないので、ここに挙げなかった句をよくないと思ったということではないです。

  • クレーン車吊るすクレーン霾曇り 近江満里子
  • 自販機の硬貨の響き春寒し 兵藤康行
  • 啓蟄や道を横切るゴムホース 千田一到
  • 記憶には残らぬ今日のたんぽぽ黄 神野志季三江
  • 白色のクレヨン増えてゆく春思 土井探花
  • 春風や波打つ水たまりの青 齊藤綺子
  • 啓蟄や女人来りて奇蹟説く 源和子
  • 朝東風や赤門前の製本屋 種田千代
  • 軒下の釘に吊るして雪合羽 川井鎮雄
  • 薪に薪立てて薪割る寒日和 岡井敬治
  • 裏通りにパンの樹の実や明易し 西村節子
  • ごみ出しに出て風花の中に入る 原美津子
  • 春浅し両手に余る飴もらふ 塩川怜子
  • 一年のおほかた闇にゐて雛 桜井教人
  • 冬薔薇抱へて入る銃砲店 鯉素奈
  • 鉄塔の脚は四本春一番 上野行治
  • 刃を入れてより白菜の芯衰ふ 筒井慶夏
  • きゆつと反る二月のメレンゲへ朝日 このはる沙耶
  • ゆるやかにまがりをるゆきのみち 相澤ひさを
  • 風上は醤油工場春兆す 白石久美子